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   <title>パラララ.</title>
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   <title>はじめに。</title>
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   <published>2007-06-08T01:04:33Z</published>
   <updated>2007-06-12T03:05:38Z</updated>
   
   <summary>最近、忙しさにかまけて文章らしい文章を書いてないなぁ、と思うことしきり。 思い切...</summary>
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      最近、忙しさにかまけて文章らしい文章を書いてないなぁ、と思うことしきり。
思い切って文章専用のブログを立ち上げてみました。

とはいえ、忙しいことにはかわりなく。

ちょっと時間のできたときどきに、
ぱらららっ、と短文を書いていこうと思います。


パラララ。パラグラフレベルの短い文章。

パラララ。軽い音をたててページをめくるように。

パラララ。続けていけたらよいですね。


がんばららー。
      
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   <title>はじめに。</title>
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   <published>2007-06-08T19:53:26Z</published>
   <updated>2007-06-12T03:05:24Z</updated>
   
   <summary>新題噺　というのは ニュースサイトのヘッドラインだけをお題にして一本書こうという...</summary>
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      新題噺　というのは
ニュースサイトのヘッドラインだけをお題にして一本書こうという短編物です。

ニュースの中身はあんまり見ずに、見出しの曖昧さ、物事をインパクト重視の視点で切り出して見出しにするという意図を逆手にとって想像を膨らませる遊びです。
たぶんgooニュースが多い予定。
      
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   <title>爆破予告教習所(1)</title>
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   <published>2007-06-09T00:29:09Z</published>
   <updated>2007-06-12T03:05:11Z</updated>
   
   <summary>「合格させないと爆破」 免許７０回以上失敗の男を逮捕(gooニュース) http...</summary>
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      <![CDATA[<blockquote style="background:#eee; border:1px dashed #333; margin:2px 5px; padding: 2px 5px;">「合格させないと爆破」 免許７０回以上失敗の男を逮捕(gooニュース)
<a href="http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/nation/CO2007060801000473.html">http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/nation/CO2007060801000473.html</a></blockquote>]]>
      「なんでオレが不合格なんだよ！　ふざけんな！」
ぺらっぺらの紙切れ一枚叩きつけ、ズンジは喚き散らした。
紙には、大きな文字でたったひとこと。

『不合格』


「おいオッサン！　今度のは完璧だったろうがよ！」
不合格、と書かれた紙を手渡した張本人は、仕立てのよさそうなグレーのスーツに身を包み、髪は七三、メガネは銀縁。
「教官、と呼びなさいズンジさん。……あなたの答案、どこが悪いかわかりますか？」
「どこももエーユーもあっか！　オレの答案、ケチつけれるってんなら付けてみろ！」
「仕方ありませんね……」

教官は机の上に積んだ紙束をぱらぱらぱら、とめくると、すばやくズンジの答案を抜き出し、机に広げる。

『合格させろ。さもなくば、爆破する』

「ほうれみろ、名文じゃねえか！　サァサァ、ケチつけてもらおうじゃねえか！　返答次第によっちゃあ……」
息荒くまくしたてるズンジに、
「まず一点。どこの世界に、手書きの脅迫状を送る人がいますか」
「馬鹿野郎！　脅迫してやるぜ！　っっつー強烈なアレを込めて伝えねえといけねえだろうが！」
「新聞を使って作るよう、学科で講義があったと思いますが？」
「ンなチンタラしたことやってられかってんだよぉ！」
「新聞は最低限の必須項目ですよ、ズンジさん？　ま、もちろんあなたが合格したくない……プロの脅迫者として社会に出るつもりがない、というのであれば強要はしませんが」
   </content>
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   <title>はじめに。</title>
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   <published>2007-06-09T03:24:36Z</published>
   <updated>2007-06-12T03:04:54Z</updated>
   
   <summary> 「ひとひと。」 2005年2月頃に作っていた連作短編集のようです。タイムスタン...</summary>
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      <![CDATA[<p>
<a href="http://pg-w.net/text/hitohito/hitohito-web.jpg"  class="highslide" onclick="return hs.expand(this, {captionId: 'hitohito01'})"><img src="http://pg-w.net/text/hitohito/hitohito-web-thumb.jpg" width="200" height="125" alt=""  valign="middle" align="right"/></a>
「ひとひと。」
</p>
<br clear="all">


<p>
2005年2月頃に作っていた連作短編集のようです。タイムスタンプ曰く。
挿絵は<a href="http://www.age.jp/~yodamove/" target="_blank">与田麗</a>大先生に描いてもらってます。
本にするつもりでMicrosoft Publisher形式で完全に出来上がってたけど
なんかどたばたで印刷しなかったかなにか。

お蔵入りももったいないので挿絵も添えて載せてみます。
与田のアニキには事後承諾だぜ！（後程連絡します）
</p>]]>
      
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   <title>log.01 君と、今宵、満月を。</title>
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   <published>2007-06-09T03:37:41Z</published>
   <updated>2007-06-12T03:04:41Z</updated>
   
   <summary>初めて「彼」を知ったときには、「彼」はわたしの前には現れなくて。 おじいちゃんが...</summary>
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   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://pg-w.net/text/">
      初めて「彼」を知ったときには、「彼」はわたしの前には現れなくて。
おじいちゃんが撮ったっていう、「彼」の写真を見ていると、
なんだかふわーっとした気持ちになって。
「彼」に会いたいな、もしかしたら今晩会えるんじゃ、って、
毎晩枕を抱きしめて、朝が来るまで窓から夜空を見上げてた。
　
両手で写真を握り締め、空と見比べながらためいきをひとつ。
なんて、キレイなんだろう。
一目でいいから会いたいな。
名前だけは分かってる。
その写真のすみっこには、おじいちゃんのものらしい字で、
「おつきさま」
と書かれてあるのだから。
      <![CDATA[///

「いってきまーす！」
湿気を吸ってばっさばさ、短めでクセだらけの髪のお手入れもそこそこに、
わたしは家を飛び出した。
家族はお父さん、お母さんに双子の弟が一人。
みんなわたしより先に仕事に出ていて、
いってきます、って言っても誰も家には残ってないんだけど。
　
こないだから働き始めた弟には悪いけど、
わたしはまだ学生をやっている。
最近お父さんの調子がよくなさそうで、
わたしも早く働かないとな、と思ってるんだけど。
　
「おはよう、アミ！」
「あ、おはよ、ゴク！」
学校の前で出会ったのは幼馴染のゴク。
がっちりした体格に短く刈った茶色の髪。元気がとりえ。
同い年で、学校にみんなより長く通ってる、ってとこも同じの、
「人生の友達」、ってやつなのだ。へへ。
　
「アミ、仕事決まったか？」
「うーん、考えてはいるんだけど」
「まったく……。お前はいっっっつも、だけど～、だけど～って」

うう。
「人生の友達」は自慢なんだけど。
自分のことをよく知ってる相手って、こういうとき鋭くてちょっとイヤ。
なんだか隣を歩いているゴクの顔を見れなくて、うつむいて答える。
　
「家の仕事は弟が継いでくれるから、なんだか迷っちゃって」
「それでも、普通は家の仕事を継いどくもんだって。
　もしも弟くんになんかあったらどうすんだ」
「そうだけど……。
　でも！　そんなこと言ったらゴクだって、早く家の仕事した方がいいんじゃないの」
反撃してやったつもりが、軽く笑顔でかわされた。
「俺はいいの」
返事は、すっごく意外なもので。
「俺はこのまま研究者になるんだからな」
おっと、急がないと。
そういうと、ゴクはさっさと走っていって、
今まで一緒に通っていたのとは違う、大きくて屋根の丸い建物に入って行った。
　
そんなこと、わたし全然知らなかったよ。
　
///

その日の帰り、ゴクは校門のところで待っていた。

「なあ、アミ。月、って知ってるか？」
「ツキ？」
「空にある、金色の星さ」
「わたし、天文学は取ってないから……」
「それじゃ、今夜見せてやるよ。俺、月の研究してるんだ」
「へー」

我が「人生の友人」ながら、なんと役にたたなさそうな勉強をしているんだろう。
でもいいのだ、勉強の中身は。
すべてのことに無駄なことなんてないんだし、本当に重要なのはそんなことじゃない。

「それと……、ちょっと大事な話があるから」
「……うん」

今夜、わたしたちは、きっと。
「人生の友人」から、「つがい」になるのだ。
もちろん、「人生の友人」がいなくなるのは寂しいし、
人生の半分がなくなってしまうような感じだけど。
「つがい」というのはもっとすごいことなんだ、とお母さんから教わってきた。
だから大丈夫なのだ。うん。


うちでの、生涯最後の勉強を終わらせてペンを置くと、わたしは待ち合わせの公園へ向かった。
子供だった日に一緒に遊んだ公園。
ゴクは大きくて、いつも見上げる相手だった。
今じゃ身長はほとんどおなじ。
今日は一緒に並んで、空を見上げることになるんだろう。
それはきっと、とても素晴らしいことなのだ。

「おかしいな……」
夜の半分が過ぎても、ゴクは姿を見せない。

待ち合わせとは神聖なもの。
大事な時間を、自分のものだけでなく、他人のものも犠牲にすること。
だから、絶対にゴクが遅れたり、忘れたりするわけがない。
気がつけば、飛び出していた。
ゴクの家へ。
走る。

「ゴク……ッ！？」
真っ暗な畦道で、ゴクは倒れていた。
月明かりだけが、ゴクの白い肌を照らしている。
「……アミ、か」
「大丈夫！？」
「いや……、もう、ダメだな。今日が終わり、みたいだ」
「そんな……！　だって、私たち、まだ４日目なのに」
うつぶせで倒れていたゴクは、最後の力を振り絞り、腕を振るわせて体を起こし、仰向けになった。

「ごめん、アミ。実はオレ、もう７日目なんだ」
「えっ……？」
「生まれてから二日、病院にいて。やっと学校に通いだしたのが４日目」
「そんなの……」
「そのおかげで、親にも期待されずに、自由に天文なんてやれたけどさ」
ウソをついていないのはわかっていた。
短い命、一度間違ったことばが混ざれば、元に戻すことは難しい。
そんなこと、みんなわかっているから。

「ほら……、アミ。見てみろよ。空」
「えっ」
夜空には大きく、細い月。
アミに抱かれ、上半身を起こしたゴクは、満足そうに言った。
「きれいだ……」
「ほんとう……。これが、ツキなんだ。こんなのがあったなんて。
　昨日はこんなのなかったよ？」
「月は、大きくなったり小さくなったりするんだ」
「もうこんなに大きいのに？」
「違う、どんどんこれから膨らんで行って、最後には丸くなるんだ」
「どうして？」
「さあな……、それが、俺の研究テーマだったんだけど」
徐々に輝きを失ううつろな瞳に、月だけが映る。

「俺の父さんが死んだとき、金色の砂になって消えていった」
「うちのお婆さんもだよ」
「……これって、月に似てないかな、と思ったんだ」
声が、次第に力を失ってゆく。

「俺達、死んだら砂みたいに消えるだろ。
　月って、よく見ると、俺達の砂そっくりなんだ。
　あの砂が月になって、また誰か生まれてくるときに砂が降りてくるんじゃないかな。
　そういうのが、研究、したかった、けど」
「ゴク！　ゴク！？」

「もういいから、放っていけよ。
　死ぬ人間に付き合ってる時間、もったいないだろ」
アミは、横たわるゴクの手を取った。
「いいよ、友達だから」
「『人生の友達』、か」
「うん」
「……ありがとう、な。今まで」
「うん。でも、もっと一緒にいられると思ってたけど……」
「ほら、また『けど』が出た。悪いクセだぞ」
「へへ。ごめんね」

どちらからともなく、手を繋いだ。

「……なぁ」
「うん？」
「もし、同い年で生まれて、月なんか知らなくて出会ってても、友達だったかな」
「そうだよ、きっと」
「……そっか」

ゴクの体は、アミの膝の上で金色の砂粒となり、やがて消えた。
ゴツゴツした土の地面に座り込んだまま、空を見上げれば。

月は、さっきより太くなっているような気がした。
　
<a href="http://pg-w.net/text/hitohito/hitohito-web.jpg"   class="highslide" onclick="return hs.expand(this, {captionId: 'hitohito02'})"><img src="http://pg-w.net/text/hitohito/hitohito-web-thumb.jpg" width="200" height="125" alt="" /></a>


「お母さん、ボクもおつきさまから生まれたの？」
「そうね。綺麗な綺麗なおつきさま」
「ボクもおつきさまみたい！」
「ええ。だけど、アノーが大人になったらね、丸いおつきさま、見れるんだけど」
「まんまるーい？」
「ええ。だから、今はお勉強がんばる時、ね？　明日からお父さんのお手伝い、できるようにね」
「うん！　じゃあ、いってきます！」

わたしももう6歳。
子供も生まれて、夫の仕事を手伝って。
だけど、そんな忙しい時間の中、ついつい思い出してしまうのはあの日のこと。
ゴク。わたしの「人生の友人」。
　
わたしももうすぐ死んでしまうけれど、
できるだけ多くの人に、月の話をしようと思っている。
ゴクが、その七日間の生涯を賭けた、月の物語を。
　
でも、わたしだってそんなこと、信じてるってわけじゃないんだけど。]]>
   </content>
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   <title>log.02 Air Force One</title>
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   <published>2007-06-09T08:09:53Z</published>
   <updated>2007-06-12T03:04:23Z</updated>
   
   <summary>簡単な引継式を経て、ようやく私は自由の身になった。 「大統領、おつかれさまでした...</summary>
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      簡単な引継式を経て、ようやく私は自由の身になった。

「大統領、おつかれさまでした！」
「おつかれさまでした」

私たち前閣僚と、彼ら新閣僚。
向かい合って「ログ」を渡し、私たちが前任者から引き継いだノウハウや政策、着手中の事業などを次代に引き継ぐ。
正面にいるのは兄の二番目の息子。
二日の任期を終えれば、次は私の三つ子の息子の誰かが引き継ぐことになるだろう。
我々以外に政治を学んできたひとはいないから、これは至極当然のことなのだ。

「大統領、これからどういたします」
「そうだね……」
生まれてこのかた、常に共にあった国務長官。
私の自慢の「人生の友人」。
「国防大臣とも話していたんですが。もしご予定がなければ、これから三人。
　余生を、我が家ででも死ぬまで語り合って過ごしませんか」
それも悪くない。
だが……。
      「いや、私は遠慮するよ」
「なにかご予定でも？」
国務長官の手を取り、堅く握りしめる。
「いままでご苦労様でした。
　もう、私につきあうことはないんです」
「なにを水くさい……人生の友人に向かって」

「国務長官は本当のところ、国防大臣と人生の友人でいたかった。
　そうでしょう」
「なにを突然……」
「別に責めているわけではないよ。
　ただ、我らの一生、本心を偽って過ごすには短すぎる。
　私の自慢の『人生の友人』ですから、最後の日くらいは、不本意のないように過ごして欲しい」
「……ですが、大統領は」
「わたしはもう充分。押し問答こそ時間の無駄だよ」
「……ありがとう、ございます」
「泣くな、みっともない。
　では、またな」
「ええ。では、死んでまた、月でお会いしましょう」

「月？」
「ええ、ご存じありませんか？
　我々は、死ぬとみな、月に行くという話を」
「知らないな。月というのはあれだろう、空にある」
「うちの母がそう、いつも申しておりました。
　だから、死んでもまた会えるのだと」
「……もう何日もの付き合いになるが、
　こんな他愛のない話をしたのも、一歳のころ以来だな」
「そうですね」
私たちは、笑いながら官邸を出て、その場で別れた。

さて、これからどうしたものか。
長距離列車に飛び乗り、窓の外を眺める。
息子たちの顔も見たくないわけではなかったが、
今までずっとひとのために働いてきたのだ、
最後の日くらいは自分のために使ってもいいだろう。

（なかなか、いい列車だ）
生産の効率化。
同じ職業のひとをできるだけ近くに集め、
今まで親からしか受け継げなかった「ログ」を
同業者と共有することで、常に最新技術が行き渡るようにする。
そのため、まずひとを移動させる交通網を準備すること。
用意が整えば、この交通網はそのまま、各地でできたものを
町へ運ぶ流通ルートにもなる。

彼が任期で行った事業は、交通網の拡大。ただそれだけ。
その後は、次代が引き継いでくれる。
この列車が大勢のひとを運び、作物を運ぶ。
そうなる未来が、明日のことのように目に浮かぶ。
だから、安心して死んでいけるというものだ。

しばらくして、元大統領はまだ新しくできたばかりの駅で降りた。
駅ばかり新しく、周りは山だらけ。
だが、先々代の計画によれば、ここは山の斜面を利用した果樹園地帯となるはずだ。
近い将来この駅は、果物の実りであふれる、にぎやかな駅になるだろう。
甘い香りすら漂ってくるような感覚にとらわれ、口の中は唾液で溢れた。
愉快な気分で駅を出ると、彼は山へと向かった。

「これは素晴らしい……」
山の中腹、獣道を少し逸れたところで見つけた洞窟。
薄暗く、湿っていて、今まで彼が嗅いだことのないような、じっとりとした臭い。
だが、その周りを取り囲む木々と木漏れ日。
加えてびっしりと羊歯植物に包まれた洞窟は、元大統領の心を打った。
「私の最期にふさわしい」

死ぬときは、一人で死にたかった。
周囲に惜しまれて……というのも、時間の無駄だとどなりつけてしまいそうだったし、
かといって全く相手にされず、ただ消えていくのもつらい。
今まで一生、一人になれる時間などほぼ取れず、
常に勉強、常に仕事。
死ぬときくらい、一人になってもよかろう、
自分の意志で一人で死のう、と思うのだ。

洞窟に入る。
外から入る光だけを頼りに、壁に手をついて、おそるおそる。
だが、少し行ったところの曲がり角を先に行くと、うっすらと明かりのようなものが見えた。
（先客か、誰か住んでいるのか？）
光を目指して、足下に注意しながらゆっくりと進んでゆく。

そこにあったものは、一冊の「ログ」だった。
持ち主の姿は見えず、今にもオイルが尽きて消えそうなランプに照らされて。
所有者のいない「ログ」。
ひとの生きてきた足跡を消さないため、見つけたものが保護すべし。
元大統領も、身に付いた習慣で「ログ」を手に取り、開いた。
「これは……っ！」
それには、恐るべきことが書かれていた。

先々代の、更に前の代。
この山で、鉱山の開発計画があった。
だが事前調査の結果、産出量も期待できないということ、
またその次の代には方針転換が計られる予定であったこともあり、
計画自体は中断されていた。

だがここに、中止の連絡を受け取れなかったひとびとがいた。
少しずつ、何代もかけて掘り進め、調査し、ついに鉱脈を発見した。
だが、それと同時に、恐ろしいものも掘り起こしてしまったのだった。

元大統領はランプを手に取り、洞窟の外へと向かった。
このランプは一体、何代に渡ってこの坑道を照らしてきたのだろう。
残り少ないオイルが、棄てられた坑道の歴史を物語る。

だが、もう大丈夫だ。
私が気づいた。
「ログ」を握りしめ、外へと急ぐ。
大丈夫、駅までの道はわかる。
そこまでいければ、誰かにこの「ログ」を渡し、官邸まで届けてもらえればいい。
それで、この件はなんとかなるはずだ。

洞窟から飛び出した。
途端口に広がる、泥の味。
（な、なんだ……？　なぜ真っ暗なんだ……？）
ガランガラン、とランプが斜面を転がってゆく音がする。
両足の感覚が、ない。
立ち上がろうにも両の腕にはほとんど力が入らず、腰から下は言うことを聞かない。
（そんな、馬鹿な……）

このままでは消えてしまう。
自分だけが消えるならまだしも、
鉱山に携わったひとの思い、歴史までもが。
何代にもわたって取り組んだ坑道開発、
その営為が、誰にも気づかれずに消えてなくなってしまう。
（だが、どうすれば……）
このままではひとたび雨が降れば、風が吹けば。
この「ログ」は人の手の届かぬ山奥へ、谷底へ、消えていってしまうことだろう。
なんとしても、それだけは。

最後の力を振り絞り、彼は「ログ」の最後の１ページを破り取った。
航空力学も工作技術も学んだことのない元大統領は、見よう見まねで紙飛行機を折り上げた。
それは一歳の頃、元国務長官が作ってくれて、結局作り方は教えてもらえなかったもの。

（誰か、受け取ってくれっ……）


翌日、この件は当時の災害記録担当官の「ログ」に、
「山火事。翌日鎮火」
と記載されたに留まった。

元大統領の紙飛行機が飛んだかどうかは、どこの「ログ」にも記されていない。
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   <title>log.03 月にまつわる俗説に関する一考察　序論（抜粋）</title>
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   <published>2007-06-09T08:29:04Z</published>
   <updated>2007-06-12T03:04:07Z</updated>
   
   <summary>月というものは本来天文学の分野であり、その存在は今や疑う余地がないものである。 ...</summary>
   <author>
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   </author>
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   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://pg-w.net/text/">
      月というものは本来天文学の分野であり、その存在は今や疑う余地がないものである。
だがそれまで、我々の間では数々の仮説俗説が現れ、消えていった。
      月には、我々とは別の生き物が住んでいる。
月には、何十年も生きることのできるひとが住んでおり、我々を観察している。
月は、ただ空に描かれた飾りである。

そのような根拠の薄い説は次々と論破され、消えていったが、
今ここに新しい俗説が生まれ、ひとの間に広まっている。
「我々は死ぬと月の一部になり、月の一部が欠けて我々が生まれてくる」という説である。
この説はご存じの通り、既に天文学的には論破されつくした感もあるが、
それでも今に至るも従来の俗説のようには消滅せず、一部で根強く語り継がれている。
これはなぜだろうか。

私はこの問題を天文学的にではなく、むしろひと類学的問題と捉え、
本論文を上梓するものである。

まず、月というものに関する基礎知識を簡単にまとめておきたい。
月とは天体である。
３０代に渡り、月を観察してきたチド一族の考察によれば、
月は円形または球体を基本とする不定形の物体で、日によって形を変えるという。
未だ月の増減に関する問題に結論は出ていないが、
月の一日あたりの増減量はほぼ一定で間違いない、という「ログ」が発表されている。

さて、そこでひと類学的論に移る。
私はこの、「月の増減に関して結論が出ていない」ということが、
専門家を除いては、この俗説に否定しきれない説得力を与えている要因であろうと考える。
以下、本論ではその仮説を検証し、ひとと俗説との関わりについて論証していくものである……
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   <title>log.04 我ら海賊、行く手に敵無し</title>
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   <published>2007-06-09T08:30:27Z</published>
   <updated>2007-06-12T03:03:51Z</updated>
   
   <summary>「ホッホ～～～～～～～ゥィ！」 「ホッホ～～～～～～～ゥィ！」 「ホ」 「ホ」 ...</summary>
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      <name></name>
      
   </author>
         <category term="001-001)ひとひと。" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://pg-w.net/text/">
      「ホッホ～～～～～～～ゥィ！」
「ホッホ～～～～～～～ゥィ！」
「ホ」
「ホ」
「ほぅぃ！」

オレたちゃ海賊（海賊）
陽気な海賊（海賊）
七つの海で見つけた宝
六つの海に捨ててきた～～～♪

「ホッホ～～～～～～～ゥィ！」
「ホッホ～～～～～～～ゥィ！」
「ホ」
「ホ」
「ほぅぃ！」
      「野郎共！」
「ホゥィ！」
「お宝はみつかったか～～～！？」
「ホゥィ！」
「見せてみな！」
金銀財宝の詰まった箱が、三人の若者によって運ばれてくる。
髭面の船長は箱の中身を確かめると、満足そうに頷いた。

「よーし上出来だ！」
「ホッホゥィ！」
「じゃあ、オレ様はこれで死ぬ。後はお前ら、好きにやんな」
「ホゥィ！」
船長は大箱を閉じ、しっかりと鍵を閉めると、肩に担ぎ上げた。
「じゃあテメエら、元気でな！」
「ホ～～～～～ゥィ！　船長に敬礼～～～～！」
「ほぅぃ！」

どっぱーん

船の通り過ぎた後、二本の航跡の真ん中に、大きなしぶきがあがった。


「ホッホ～～～～～～～ゥィ！」
「ホッホ～～～～～～～ゥィ！」
「ホ」
「ホ」
「ほぅぃ！」

オレたちゃ海賊（海賊）
非情な海賊（海賊）
裏切り者には
血の粛正だ～～♪

「オイオマエら、次の船長は長男のこのオレだ！」
「なにいってんの、次男でも副船長のこの俺だろ」
「バカかお前ら、三つ子に長男も次男もあるか！　オレだ」
「ええい、やかましい！　てめえらコイツらをやっちまいな」
「そりゃこっちのセリフだ！　野郎どもこいつらを海に放り込んでやれ」
「テメエら子分に頼らねぇとなんもできねぇのかよ！？」

「なんだと！？」

どっぱーん
どっぱーん　どっぱーん

「弟は海に放り込め！
　兄貴と子分共は一生漕ぎ手だ、いいな！」
「ホ～～～～～ゥィ！」

どっぱーん


「ホッホ～～～～～～～ゥィ！」
「ホッホ～～～～～～～ゥィ！」
「ホ」
「ホ」
「ほぅぃ！」

オレたちゃ海賊（海賊）
無敵の海賊（海賊）
宝を求めて
西へ東へ～～～～～～～～♪

「船長！　向こうから船が来ます！　猫の目団です！」
「よーし野郎共、配置につけぇ！」
「ほぅぃ！」

見張り台に、マストに甲板に。
５０人からの海賊達がびっしりと並び、行く手に現れた船へと向かう。
「野郎共、かかれー！！」

「ホッホ～～～～～～～ゥィ！」
「ホッホ～～～～～～～ゥィ！」
「ホ」
「ホ」
「ほぅぃ！」

「ヨイヤ！」（ほぅぃ！）
「ヨイヤ！」（ほぅぃ！）
「ヨッ」（ホッ）
「ヨッ」（ホッ）
「ヨイヤッ」（ホゥ～～～～～～～イ！）

「よう！　猫の目の！」
「珍しいな魚の目の！　八代前に会ったっきりじゃねぇのか！」
「おう！　ご自慢の人魚像は飾ってねぇのかよ！」
「あれか！　ありゃあ三代前が飛び込むときに宝がみつからなかったってんで、持ってっちまいやがった！」
「じゃあ、アレも見つけたもん勝ちだな！？」
「そうだ！　お前らのところの龍神の珠も早いもん勝ちだ！」
「ガハハ」
「ガハハ」

船長会談の間に船員たち同士での情報交換、食料交換、人間交換などが行われ、
代々「ログ」に記された通り、すれ違いの手続きは滞り無く済んでいく。

「西の方で、見境無く船を襲う連中がいるそうだぜ。気をつけな！」
「東の方じゃ大地震が起こって、港に行っても補給できねぇぜ。気をつけな！」
「「それじゃ、よい宝を！」」

オレたちゃ海賊（海賊）
流浪の海賊（海賊）
海がオレたちの大地
海が墓場さ～～～～～～～～♪

「ところで船長」
「どうした副長」
「オレたち、いつまでこんな生活続けるんですかい？」
「……」
「……」

どっぱーん


「行くぞ野郎共！」
「ほぅぃ！」
「帆をあげろ！」
「ほぅぃ！」
「お宝探しに、出発だ！」

オレたちゃ海賊（海賊）
永遠の海賊（海賊）
六つの海に捨てた宝
七つの海に探しにいこう～～～♪
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   <title>log.05 アノー・サフィリ記念館</title>
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   <published>2007-06-09T08:32:45Z</published>
   <updated>2007-06-12T03:03:37Z</updated>
   
   <summary> アノー・サフィリは一人っ子であった。 それだけでも、１００年に一人のことである...</summary>
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         <category term="001-001)ひとひと。" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://pg-w.net/text/">
      <![CDATA[<blockquote style="background:#eee; border:1px dashed #333; margin:2px 5px; padding: 2px 5px;">
アノー・サフィリは一人っ子であった。
それだけでも、１００年に一人のことである。
アノーには、両親から受け継いだ職というものがなかった。
それにも関わらず、アノーは既に２歳には学問を修め、生業を定めていた。

早逝が惜しまれたアノーには子供がおらず、「ログ」を継ぐものもいない。
だが、５歳で死ぬまでの３日間、その全てが収められた「ログ」は一般に公開され、
誰もがアノーの遺志を受け継ぐことができる。

その「アノー・ログ」が所蔵されている、当アノー記念館への交通アクセスはこちら。
２４時間開館、入館料は一人・三人・五人の３コースより……

（「アノー記念館　入館のしおり」より抜粋）
</blockquote>]]>
      <![CDATA[「助けてー！」
「誰かー！」
「ぐへっへっへ、こんなところに誰も来やしねぇよ！」

ひと里離れた山道で、男が一人と女が二人。
女二人のいでたちは、山歩きをするようには思えないような軽装。
一方男の方は、どこから見ても悪党面の山男。
髭と頬の傷が人相を凶悪なものにしている。

「まてっ！」
「むむっ、誰だ？」

大樹の傍ら。
腕を組んで木にもたれかかり、悠然と現れたのはすらりとした長身の男。

「女性が怖がっているじゃないか。
　怖い顔をするのはやめてくれないか」
「この顔は生まれつきだ！
　馬鹿が、妙なところにノコノコ現れたことを後悔させてやるぜ、グッヘヘ」

大男の体がさらに膨張する。
服が裂け、皮膚が破れ、中から短毛獣のような剛毛が吹き出るように一斉に生える。

グガゴァァァァァァア

「やはり、人狼か！」
巨大な狼のように姿を変えた大男を見上げながら、変身中の隙をついて抜け目無く女の子たちを逃がす。
「ゴゥバババババァ！　さぁて、オレは腹が減っているんだ。
　この際男でも女でも関係ねぇ……」
姿勢を前屈みに、全身のバネを溜める。
「食ってやる！！」
その場から、足跡と土埃だけを残し、消える。
次の瞬間、鋭い牙の立ち並んだ狼の大きな口が、男の眼前に迫った。
血飛沫が、舞った。

「ギャァァァァァァァァッ！」
だが、その血のほとんどは、男のものではなかった。
「バ、バカな……」
大きく開かれたままの狼の口。
口が裂けたかのように、と例えられる狼の口の端が、さらに頭の後ろ近くまで引き裂かれ、大量の血を吹き出していた。
「お、お前はまさか……」

ザッ。
「ひとは問う。どうして耳が大きいのかと。
　それは、助けを求めるひとの叫びを聞き逃さぬため」
ザッ。ザッ。
「ひとは問う。どうして目が大きいのかと。
　それは、ひと知れず闇に潜む、卑劣な悪を見逃さぬため」
ザザッ。
「ひとは問う。どうして口が大きいのかと。
　それは、世にはびこる悪を、ひとつのこさず喰らいつくすため！」

黄金の毛並みに、頭部を覆いつくすかのような赤褐色のたてがみ一筋。
「ひと呼んで、怪狼紅頭巾。見参！」
満月の光を背負い、人狼が一匹。
大きな岩の天辺で腕を組み、スラリと立っていた。


「はーいカットぉー！」
「おつかれさまでーす！」
「お疲れでーす」

アノー・サフィリ、４歳。
世間では仕事を始めたばかりの歳になるが、
アノーはすでにこの仕事について二日目になっていた。

「よかったよー、アノーちゃーん」
「あ、お疲れさまです監督」
キャップにサングラス、肩にかけた上着の袖は前で括られている。
まだ新しい職業、「監督」の、先代から伝わる作業着らしい。
「今回アクション巨編で行けるのもアノーちゃんのおかげ。
　……あいつのとこは代々顔はいいんだけど、アクションはからっきしだからなー」
「ハハハ」

怪狼紅頭巾。
満月の晩に、月から送られるひとの思いを受け取って変身し、死んだひとの無念を晴らすという変身ヒーロー。
その、変身後の中身がアノーの選んだ仕事だった。
スタントマンの誕生である。

半日で収録が終わり、スタッフは現場となった山を下りた。
だが、アノーは次の仕事まで、この山の小さな炭焼小屋で過ごすことに決めていた。
２歳のときに発表した、論文の続きを書くために。
「月の光というものは、死んでいったひとの思いをうけとって変身……
　じゃない、台本と混ざった」
「ログ」と論文を見比べながら、「ログ」にないことを論述し、引き写し、また「ログ」に転記する。

ふと、外から木が折れるような音が聞こえた。
書き物に没頭していた顔を上げると、深夜というのに外は妙に明るい。
窓を開けると、一気に熱気が吹き込んできた。
「……山火事！？」
山小屋の外は、一面炎に包まれていた。
まだ遠巻きだったが、このままでは炭焼小屋が炭小屋になるのも時間の問題。
「ログ」と論文の原稿だけひっつかんで、アノーは外へ飛び出した。

仕事柄危険な状況には慣れているが、実際の火事となるとまた違う。
もう深夜ではあったが、幸か不幸か火に包まれているせいで辺りは明るい。
木を避け、下生えをかきわけて。
一目散に、獣道を駆け下りる。
「うわっ」
急激に吹き付けた熱風が、アノーの体を煽った。
どうも、下山ルートを行くごとに火の勢いが増しているような気がする。
「まずいな、こっちが火元か？」

と、目の前を、ふわりと白いものが横切った。
思わず手を出して、掴む。
「これは……？」
三角形の不思議な紙。
アノーの知る限り、紙はこんな風に空を飛ぶものではなかった。
来た道をひきかえし、他の下山ルートへ向かいながら、
その不思議な紙の謎を解こうと、折り目を開いてみる。

「こ、これは……！？　『武器』だって？」
紙の中身は、「ログ」だった。
その内容がもたらした衝撃に、アノーの足は止まった。
特殊な速記法によって書き留められていく「ログ」。
その１ページの内容は、今では失われたはずのもの、
「武器」を発見してしまった、という記述だった。

「どうしよう……、早く誰かに知らせないと！」
駆け下りようとした足が、竦み上がる。
あまりのショックに思考が止まり、いままで通ってきた道がわからない。
どちらが下か、わからない。
（落ち着け、落ち着け！）
炎に包まれながら、徐々にアノーは自分のもっとも慣れ親しんだ感覚、
危険を前にして、確実に仕事をこなす感覚に馴染んでいく。

「まず、『武器』だ。これをなんとかする。
　次に火事。
　ただ問題がひとつ。『武器』にこの火がついて、大爆発するかもしれない。
　そうなったらここいらは全滅だ。
　ひと類学の歴史科で習った、確か」
一歩動いて火の粉を避ける。
「ログ」が燃えないように気をつけて。

「じゃあ先に『武器』を運び出す。無理か。量が多そうだし……」
アノーは傍らの樹に拳を打ち付け、額をぶつけた。
「ログ」を何度か読み返し、自分のログになにごとか書き付けていった。

「よし、これでいこう」


<blockquote style="background:#eee; border:1px dashed #333; margin:2px 5px; padding: 2px 5px;">
「僕は、不思議と怖くなかった。
　仕事柄、というのもあったろう。
　撮影の延長のような気持ちだったのかもしれない。

　大規模火災の対処法は学校で習った。
　なんという名前かは覚えていないが、確か大きな爆発で火を吹き飛ばす方法だ。
　きっとそのとき僕は爆発の中心にいるので、成功したかどうかはわからない。
　勉強したことが実際に役に立ったのかどうか、確認するチャンスがなくて残念。

　でも、これで大火事がくい止められて、忌まわしい武器も消すことができるなら、
　きっと僕の一生の最後の仕事にふさわしいのではないかとおもう。
　人生の友人がいなかったのだけが、心残りだ。
　でも、月ももうすぐ一杯になる。
　あれが減り始めるときには、僕もまた新しく生まれて来れるんだろう。
　月の明かりを頼りにして、僕は作業に取りかかった……」

（アノー・ログ　一般公開分より抜粋）
</blockquote>

<blockquote style="background:#eee; border:1px dashed #333; margin:2px 5px; padding: 2px 5px;">
「火事というものは自然に消えるものであって、
　あのような手段をとるべきではなかった。
　幸運にも我々にもたらされた貴重な『ログ』である武器を、
　個人の判断で再び土砂の奥深く沈めてしまったのだ。
　これは我々の種族理念にも反する行いであって、
　到底看過できうることではない。

　そもそも、月がどうとかいう迷信のために、
　命を軽んずる若者が多いといわれているが、
　この件もそういった一連の流れにあるのではないだろうか。
　我々が死んで月に行くなどということはない。
　あたら若い命を粗末にすることのないよう……」

（アノー事件に対する国防長官の見解）
</blockquote>

<blockquote style="background:#eee; border:1px dashed #333; margin:2px 5px; padding: 2px 5px;">

「おったまげただぁ！
　ワシは見たんじゃ、燃えちょる山のまんなからへんがな、こう……ドカーン！」
「きゃっ」
「……と噴火したんじゃよ」
「そ、そうですか、それは大変でしたね」
「それがこの崩れた山じゃあ。
　ワシらが一所懸命がんばってきた果樹園も、ほれ、埋まってしもうたわ」
「一体なにが起こったんでしょうか」
「……ここだけの話、ワシは見たんじゃよ。
　昨日、前の総理大臣がひとりで登っていったんじゃ」
「以上、避難所からお伝えしました」
「これはそう、陰謀じゃよ、陰謀！
　なにやらキナ臭い陰謀の……、おい！　ワシの話を」

（緊急特番「火災、爆発……そのとき山に何が起こったか」　国営放送 A時～B時）
</blockquote>

<blockquote style="background:#eee; border:1px dashed #333; margin:2px 5px; padding: 2px 5px;">
「当館は閉鎖いたしました。
　ご用の方は以下の連絡先まで」

（アノー記念館　正面ゲート前掲示物）
</blockquote>]]>
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